鍼灸マッサージ教員に興味があるんだけど、ネットで調べてもあんまり情報がないんだよね…。
通ってた専門学校に教員養成科があるからそこに通うのが無難かな?
もし鍼・灸・マッサージ師免許全て持ってるなら、専門学校の教員養成科へ進学するのはちょっと勿体ないと思うな!
僕なら大学で教員免許を取得するよ!
え?大学へ進学するの?
鍼灸マッサージ師とは関係ない道に進むってこと?
そうじゃないよ!
実は鍼灸マッサージ師が高校教員になれるって知ってる?
あまり知られていないんだけど、一部の高校には“鍼灸マッサージ科”があるんだよ!
(どの都道府県にも1校はあるから、きっとお住まいの地域にもあるはず!)
高校の数学教員免許を大学で取得するのと同じように、高校の鍼灸マッサージ教員免許も大学で取得するんだよ!
この記事では、「鍼灸マッサージ教員養成課程の選び方」をテーマに、①そもそも高校で鍼灸マッサージ教員をするとはどういうことか、②なぜ大学で免許を取得すべきなのか(専門学校と大学の教員養成課程の違い)についてお話ししていきます。
最後まで読んでいただければ、僕なら大学で鍼灸マッサージ教員免許を取得するという意味がわかり、教員養成課程選びの失敗を避けることができます。特にこの記事は一般的な鍼灸マッサージ師でも知らないような情報が詰まっていて、知っているか知らないかだけでキャリアパスに圧倒的な違いが生じるので是非最後までご覧ください!
ESSENCE
Q. 鍼灸マッサージ教員養成課程はどう選んだらいいの?
A. 僕なら大学で教員免許を取得する!
なぜなら…
- ●●に圧倒的な差がある
- ▲▲学校教員(=高校教員)になることができる
- ▲▲学校以外にも専門学校鍼灸マッサージ科や■■科にも就職できる(就職上の保険がある)
鍼灸マッサージ師が“高校教員になれる”という真意
鍼灸マッサージ師が高校教員になれるってどういうこと?
早速、タネ明かしからしていくよ!
高校は高校でも、盲学校高等部のことでした。
鍼灸マッサージ師という職業は江戸時代から視覚障がい者の職業として強く根付いており、現在も各都道府県の盲学校に職業教育課程として“鍼灸マッサージ科”が設置されているんです。
ちなみに盲学校の場合は“鍼灸マッサージ科”ではなく“理療科”という名称であることにご注意ください。
つまり、鍼灸マッサージ師が高校教師になれるといったのは、盲学校理療科教員になれるということです。
でも、盲学校の教員になるには教員免許が必要じゃないの?
その通り!
だから、大学で教員免許を取得するんだよ!
実は盲学校理療科の教員を養成する課程が国内で1つだけ存在するんだ!
それが筑波大学理療科教員養成施設というところだよ!
鍼灸マッサージ教員養成課程の概要
教員養成課程の選択肢
「鍼灸マッサージ師が高校教員になれる」という意味がわかってスッキリしたよ!
鍼灸マッサージ教員になるには専門学校の教員養成科に通うしかないと思ってたけど、筑波大学理療科教員養成施設という選択肢もあるんだね!
もしかして、他にも選択肢があったりするの?
“教員免許の取得”ではなく“教員になる”方法ということなら、実はもう1つだけ選択肢があるよ!
POINT
鍼灸マッサージ教員になるための選択肢
- 専門学校教員養成科
- 筑波大学理療科教員養成施設
- 大学院修士・博士課程
※ 履修した科目のみ授業を担当することができる
鍼灸マッサージ教員になるには大学院に通うという方法もあるんだね!
そうだよ!教員になるための方法としては以上の3通りで全部だね!
大学院については教員養成課程とは少し違うので別の記事で触れることにするよ!
ここでは専門学校教員養成科と筑波大学理療科教員養成施設の違いについてみていこう!
専門学校教員養成科 | 筑波大学理療科教員養成施設 | |
---|---|---|
管 轄 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
取得可能免許 | 名称なし(修了証が免許代わりになる) | 特別支援学校自立教科教諭一種(理療) |
学 校 数 | 4校*1 | 1校 |
入学定員 | 10~20名 | 20名 |
必要免許 | 鍼灸師・鍼灸マッサージ師*2 | 鍼灸マッサージ師 |
通学期間 | 2年 | 2年 |
授業時間 | 9:00~15:00 | 9:00~17:00 |
学 費 | 2年間合計 約230~340万円*3 | 2年間合計 約5万円 |
就職先*4 | 専門学校 | 盲学校、専門学校、柔道整復師養成学校 |
担当可能科目 | 鍼灸マッサージ師養成課程の全科目 | 鍼灸マッサージ師養成課程の全科目 +柔道整復師養成課程の基礎科目 |
*1 4校の学校名(所在地)は以下の通りです。
東京医療専門学校(東京都新宿区)、東京医療福祉専門学校(東京都中央区)、平成医療専門学校(大阪府大阪市)、明治東洋医学院専門学校(大阪府吹田市)
*2 いずれか1つの免許でも入学可能な専門学校もあります。
*3 学校によっては鍼灸マッサージ師教員と鍼灸師教員とで学費や授業時間が異なる場合がありますが、ここでは主に鍼灸マッサージ師教員の値を参考にしています。また、こちらの値は各学校のHPを参照しておりますが、実際に要する費用は多少異なる可能性もありますのでご注意ください。
*4 もちろん鍼灸院開業・勤務も可能ですが、ここでは省略しています。
筑波大学理療科教員養成施設の特徴
筑波大学理療科教員養成施設は大学なのに通学期間は2年間なの?
筑波大学とはいっても学部とは少し違っていて、筑波大学“附属”理療科教員養成施設と考えるとわかりやすいよ!
教員や学生は筑波大学の所属だけど施設自体は独立しているから、カリキュラムも独自のものなんだ!
ここからは筑波大学理療科教員養成施設に焦点を当てて、専門学校教員養成科と比較した場合の長所と短所(というより注意点)について整理していくよ!
GOOD Points
- 学費が圧倒的に安い
- 就職先の選択肢が多い
- 視覚障がいに関する理解が深まり、人生や社会に関する見聞が広がる
BAD Points
- 入試の難易度が少し高い(鍼・灸・マッサージ師免許全て所持していることが条件!)
- 授業が大変
- 学位が取得できるわけではない
1. 学費が圧倒的に安い
まず目に留まるのはやはり学費でしょうか。
2年間で要する学費は、専門学校教員養成科は230万~340万円なのに対し、筑波大学理療科教員養成施設は5万円程度です。
なぜこんなに安いかというと、理療科教員養成施設は入学者の多くが盲学校理療科で鍼灸マッサージ師免許を取得した視覚障がい者ということで、学費負担の軽減が配慮としてなされているようです。
2. 就職先の選択肢が多い
あれ?表の担当可能科目のところに“柔道整復師養成課程の基礎科目”って書いてあるよ?
鍼灸マッサージ師とは別の資格じゃないの?
良いところに目を付けたね!
制度が少し複雑なんだけど、そこも理療科教員免許の強みなんだよ!
柔道整復師にも教員免許制度はあるのですが、実は免許を取得しても担当できるのは柔道整復師養成課程の中でも専門科目のみ(骨折や脱臼などの外傷の整復方法や固定法など)に限定されています。
それでは誰が基礎科目(解剖学や生理学など)を担当できるのかというと、医師や歯科医師、そして理療科教員免許取得者なんです。
ですので、専門学校教員養成科よりも就職先の選択肢が増える点も理療科教員養成施設で教員免許を取る大きなメリットです。
3. 視覚障がいに関する理解が深まり、人生や社会に関する見聞が広がる
メリットは制度的なものばかりではありません。
実際に理療科教員養成施設に通った僕の同級生は「2年間を視覚障がいのある仲間たちと一緒に過ごし、さらに教育実習では視覚障がいのある生徒さんたちに教員として医療を教えるということも経験するので、いろんな場面で視覚障がいの理解を深めることができた」と話していました。
そして単に視覚障がいに関する理解が深まるというだけでなく、「視覚障がい者の多くは中途障がい(生まれた時点では障がいはなかったが、病気や事故などによって途中から障がいを持つこと)でクラスメイトも大半がそうだったが、そんな彼らが障がいを乗り越えて前向きに生きる姿を身近でみてきて自身の人生に対する考え方も変わった」という話も非常に印象深いと思いました。
僕自身の話ではないのですが、是非記しておくべき貴重な体験談だと思いますので紹介させていただきました。
4. 入試の難易度が少し高い
これだけ理療科教員養成施設のメリットが多いと競争率も高いんじゃないの?
筑波大学というと偏差値が高いイメージもあるし、入学難易度が高そう…。
確かに専門学校と比較すると入試の難易度は少し高いかな!
でも以前は倍率がかなり高かったみたいだけど、ここ数年では低下しているみたいだよ!
ここでは①入学要件、②競争率、③試験概要に分けてお話ししていきます。
① 入学要件
まず最大の注意点ですが、そもそも入学するには鍼・灸・マッサージ師免許全て所持していることが条件です!
ですので、専科で鍼灸師免許のみ取得された場合はマッサージ師免許も取得しなければなりません。(それにはさらに3年間の時間と約340万円の学費が掛かります…。)
② 競争率
また、理療科教員養成施設は全国に1つしかないので、盲学校理療科や専門学校本科を卒業した方々が各地から集まってくる分競争率が高くなります。
ただ、ここ数年はどうやら定員割れの状態が続いているらしいので、以前と比べてかなり入りやすくなっているようです。
③ 試験概要
入試も1次と2次に分かれていますので、その分だけ対策を取らなければなりません。
入試の概要は以下の通りです。
POINT
筑波大学理療科教員養成施設の入試概要
- 1次試験(11月下旬)
筆記 … 小論文、外国語(英語)、基礎医学(解剖学、生理学、病理学概論、衛生・公衆衛生学)、臨床医学(リハビリテーション医学、臨床医学総論、臨床医学各論)、東洋医学(東洋医学概論、経絡経穴概論、東洋医学臨床論、あはき理論) - 2次試験(1月下旬)
実技 … 理療に関する実技(検査法や鍼通電など)
面接 … 人物に関すること、理療に関すること
参考:筑波大学理療科教員養成施設HP
※入試の過去問は桜雲会出版社で販売されています。
5. 授業が大変
通常、大学の教育学部などでは教員免許取得に必要な単位を4年間で修得するところ、筑波大学理療科教員養成施設では2年間で修得することになります。
その分だけ卒業までの道のりはなかなか大変なようです…。(前段階として鍼灸マッサージ免許の取得に3年間掛かっていることを考慮すると、そこからまた4年間掛かるよりは2年で一気に終えられた方がいいと僕は思うのですが。)
1年生の間はほぼ毎日9時から17時まで授業があり、しかもオムニバス形式(1つの科目を複数の教員が交代で担当すること)で授業が行われることが多く、担当教員ごとにレポートや試験が出されます。
また、2年生になると授業数は減る代わりに卒業研究や臨床実習、教育実習をすることになり、1年生とは別の大変さが襲ってきます。
本来4年掛かるところを2年で修得…かなり大変そう。
確かに卒業までの道のりは大変かもしれないけど、留年する人はほぼいないみたいだよ!
6. 学位が取得できるわけではない
”大学”ということは、理療科教員養成施設を卒業すると学位が授与されるの?
鋭い質問だね!
筑波“大学”とはいっても、理療科教員養成施設は学部とは違う点に注意して!
ここも少し複雑なポイントですが、“大学”という名称で尚且つ”教員免許が取得できる”ということから、卒業時には学士(教育学)などの学位が授与されるものと思ってしまいますが学位は授与されません。
ですので、筑波大学理療科教員養成施設を卒業しても、厳密には“大卒”には該当しない点にご注意ください。
※これまたややこしい話ですが、教員免許を所持していると“大卒相当”とみなされることがあるようです。
鍼灸マッサージ教員の概要
教員養成課程についてはよくわかったよ。
その先の就職先について、冒頭では「高校(盲学校)の鍼灸マッサージ科教員になる」っていってたけど、専門学校教員と盲学校教員ではどう違うの?
筑波大学理療科教員養成施設で教員免許を取得したところで、盲学校教員になるメリットがなければ仕方がないから、つまるところそこが大事なポイントだよね!
ここからは教員養成課程を卒業した後のことで、鍼灸マッサージ教員として働くことについて話していくよ!
共通の特長(臨床の道との比較)
1. 鍼灸院勤務よりも安心して働ける
鍼灸マッサージ業界の大きな流れとして、1998年の福岡地裁判決から鍼灸院の数が急増しており、ここ最近では競争が激化するあまり一転して減少傾向にあります。
ですので、開業するのはなかなかにリスキーな状態です。
一方、勤務するにしても、開業するよりは比較的安定して働けるかもしれませんが、勤務するにしてもいつ勤務先の鍼灸院が潰れてしまうかという不安は拭いきれません。
そういった意味では、専門学校や盲学校に勤務した方が安心して働けるという特徴があります。
2. 教育者ならではのやり甲斐がある
これは僕自身が非常勤講師として働いた経験から実感したことです。
やはり自分の授業を聞いて学生が何かを学んだり、感じ取ってくれたりして成長していく様子をみるのは教育の道ならではのやり甲斐だと思います。
3. 半ストック型の収入
一般的な話として、収入は”フロー型”と”ストック型”に分けられるということを聞いたことがあるでしょうか?
フロー型の収入というのはいわゆる“労働”のことで、自らの時間を費やして労働し、その対価として給与を得ることです。(ちょうど臨床の道が典型例です。)
一方、ストック型の収入というのは、YouTube広告などがよく例に挙がりますが、1度作った動画に企業の広告が付けば後は何もしなくても再生回数に応じて報酬が支払われるという仕組みのことです。
さて、教員という職業はというと僕は”半ストック型”だと思っています。
というのも、実際に授業をするとなると最初は授業資料の作成や授業の進行に慣れず苦労しますが、ある程度授業資料が出来上がって自分なりの授業スタイルが確立できれば、後は毎年同じように授業をすればよくなるからです。(もちろん、授業内容の更新やさらにわかりやすい授業となるような努力は必要です。)
盲学校教員の特長(専門学校教員との比較)
臨床とは違った、教員ならではの利点があるんだね!
専門学校教員と盲学校教員ではどう違うの?
盲学校教員には特別支援教育という専門性も求められるから大変な部分もあると思うけど、専門学校教員よりはいいんじゃないかと僕は思うな!
大まかな違いを整理していくよ!
専門学校教員 | 盲学校教員 | |
---|---|---|
立 場 | 私立学校法人教員 | 地方公務員 |
給 与*1 | 400~600万円 | 350~900万円 |
学生数 | 20~30名 | 1~5名 |
専門性 | 鍼灸マッサージ | 鍼灸マッサージ師+視覚障がい教育 |
指導のゴール | 国家試験合格 | 国家試験合格+社会的自立 |
*1 給与については同じ専門学校教員あるいは理療科教員でも地域や年齢、職位などによって大きく異なるため、ご参考程度にお考えください。
地方公務員で安定した雇用というのは魅力的だね!
それに専門学校教員より給与が高いんだね!
僕なら(専門学校ではなく)大学で教員免許を取得して、盲学校理療科教員を目指すといった理由がわかってもらえたかな?
さらに、一般的な高校教員と比べても利点がいくつかあるから触れておくよ!
1. 競争率が低い
確かに高校教員というのは魅力的だけど、そもそも教員採用試験ってなかなか通らないんじゃないの?
一般的にはそう思われているけど、それは”競争率が高い”からだよね!
じゃあ高校教員の中でも理療科教員だとどうだろう…?
一般的なの現代文や英語などの高校教員の場合は、全国津々浦々に大学があり志望者数も非常に多いため競争率が高く、なかなか正規採用を勝ち取りにくいという問題点があります。
一方、盲学校理療科教員の場合はというと、もうおわかりの通り筑波大学理療科教員養成施設の出身者しか競争相手がいないので競争率が低いです。
2. 転勤がない
公立の普通学校の教員の場合は定期的に転勤があるので、通勤上不便が生じる可能性があります。
一方、盲学校の場合は基本的に各都道府県に1校しかありませんので、転勤がないというのも大きなメリットです。
3. 生徒数が少ない
普通学校の高校の場合、1クラスあたりの生徒数は20~30名程度ですが、盲学校理療科の場合だと1クラスあたりの生徒数は多くても10名に満たない程度です。
そのため、高校教員というと成績処理などの業務に追われているイメージがあるかもしれませんが、盲学校理療科の場合はそれほど大変な作業にはなりません。(”量”は多くない分、生徒たちが持つ視覚障がいのニーズに応えてあげるという”質”は求められます。)
ただ、生徒数が少ないということは、長い目でみると盲学校理療科そのものが減ってしまうというリスクにもなり得る点には注意が必要です。
少子化などの背景に加えて、特に最近では理療科よりも情報系の学科を希望する生徒が増加しているようですので、もしかすると近隣の盲学校同士で理療科を合併するなどといったことも起こるかもしれません。
まとめ
卒業後の就職も含めて、教員養成課程のことがよくわかったよ!
とりあえず、筑波大学理療科教員養成施設に通っておけば、専門学校教員養成科で教員免許を取得した場合+αのメリットがあるんだね!
まとめるとそういうことになるね!
最後に重要な点をおさらいするよ!
ESSENCE
Q. 鍼灸マッサージ教員養成課程はどう選んだらいいの?
A. 僕なら大学で教員免許を取得する!
なぜなら…
- 学費に圧倒的な差がある
- 盲学校教員(=高校教員)になることができる
- 盲学校以外にも専門学校鍼灸マッサージ科や柔道整復科にも就職できる(就職上の保険がある)
そしてもう1つ、教員養成課程を経て研究の道へ入る、あるいは並走するという選択肢もあることを忘れないでください。
途中で大学院の話は省略しましたが、教員養成課程とダブルスクールするという手もあります。
大学院についてはこちらの記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。
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