学 問

【キャリア03】大卒じゃなくても大学院に進学できる!?鍼灸マッサージ師が“研究者”になる方法とメリット・デメリット

2023年7月13日

ATTENTION

先にいっておくと、大学院進学(特に博士課程)は積極的には勧められないというのが僕の本音です。

それでも、鍼灸マッサージ師免許を持っているなら目指してみてもいいと思っています。

さらにいうと、大学院に進学する前に理療科教員免許を取得しておくことを強くお勧めします。

理療科教員免許って何?という方はこちらの記事をご覧ください。

【キャリア02】高校教員にもなれる!?鍼灸マッサージ“教員”養成課程に進学するなら●●一択!

この記事では、「鍼灸マッサージ教員養成課程の選び方」をテーマに、①そもそも高校で鍼灸マッサージ教員をするとはどういうことか、②なぜ大学で免許を取得すべきなのか(専門学校と大学の教員養成課程の違い)につ ...

鍼灸マッサージの研究をするために大学院に入りたいけど、周りに大学院に進学した人が全くいなくて困っちゃったな。
大学院に入るためには、まず大学から入り直さないとダメだよね…?
よし、一念発起して大学受験をしてみよう!

ストップ!
勘違いしている人も多いけど、実は大学院に入るのに必ずしも大学を卒業している必要はないんだよ!
ところで、ひと言に大学院といっても2段階の課程があることは知ってる?

ガネ吉

え?そうなの?
単に研究ができると思って大学院に進学したいと思ったけど、改めて聞かれるとどんなところか全然知らないな。

世間的にも大学院についてはあまり知られていないから無理もないね!
でもまず知っておいてほしいのは、大学院進学は戦略が非常に大事なんだよ!

ガネ吉

この記事では、博士号を取得して現役の研究者として働いている僕の実体験から、大学院に関する基本知識から大学院進学を考える上での戦略やリスク鍼灸師ならではの強みまでお話ししていきます。

この記事を読んでいただければ、なぜ僕が大学院進学を勧めないのか、鍼灸マッサージ教員免許取得者なら勧められるのかについてわかるようになります。

ESSENCE

Q1. 大卒じゃなくても大学院に進学できるの?

A1. ●●を持っていれば進学できる!

Q2. 大学院はどう選んだらいいの?

A2. ▲▲を取得しているか否かで分かれる!


Q3. 大学院進学はお勧めできる?

A3. 基本的にお勧めできない!けど、▲▲を持っているなら話は別!

大卒じゃなくても大学院に進学できる

入学資格は国家資格でOK

さっき「大学院に入るのに必ずしも大学を卒業している必要はない」っていってけど本当?

もちろん本当だよ!
もう少し具体的にいうと、国家資格を所持していれば入学を認められる大学院があるんだ!
大学院については誤解されている人も多いから、まずはよくある誤解を解いていこう!

ガネ吉

早速、入学資格の話からしていきます。

具体的にいうと、文科省が定める大学院修士課程の入学資格の1つに「大学院において個別の入学資格審査により認めた22歳以上の者(施行規則第155条第1項第8号)」という記載があります。
参考:文部科学省HP(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/07111316.htm

つまり「22歳以上であれば、入試を受けてもよいかどうかの判断は各大学院にお任せしますよ」ということです。

個別の入学資格審査”?
何か秀でた成績を残した人しか通らなそうな響きだけど…。

審査とはいっても、厳しい基準が設けられているわけではありませんのでご安心ください。

何を隠そう、僕自身が大学を経ずに大学院に進学した身ですから。

“個別の入学資格審査”の基準は大学院によって多少異なりますが、鍼灸系の大学院であれば国家資格一定期間以上の臨床経験などが条件として定められていることが多いです。

(鍼灸系大学院以外では入学資格審査を実施していなかったり、国家資格を持っていても審査に通らなかったりするかもしれません。もし希望の大学院が鍼灸系でない場合は、ひとまず鍼灸系大学院で修士号を得てから別の大学院博士課程へ進学するという手もあります。)

つまるところ、鍼灸師免許さえ持っていれば鍼灸系大学院への入学資格は得られるよ!
でも、あくまで「入試を受けるための審査」であって、審査に通ることと入試に合格することは別だから注意してね!

ガネ吉

大学院入試難易度は高くない

専門学校卒でも“個別の入学資格審査”を通過すれば大学院入試を受けられることはわかったよ。
でも、大学入試よりもハードルが高いんじゃないの?

それもまた多くの方々が勘違いしているところだね!
一般的に大学院入試は大学入試よりもハードルが低いんだよ!

ガネ吉

大学入試と大学院入試では科目や専門性の深さなど多くの違いがありますが、決定的に違うのは大学・大学院側のスタンスだと僕は思います。

というのも、大学・大学院運営の観点からすると大学院生は戦力になるからです。

大学・大学院というのは教育機関であると同時に研究機関ですので、研究業績(論文や学会発表など)を上げる必要があります。

その観点からすると、大学生の場合は卒業要件からして研究することが必須ではないため、研究業績へはあまり貢献しません

一方、大学院生の場合は修了要件にも修士論文や博士論文の提出が求められており、必然的に研究業績に貢献することになるので大学側としても戦力として積極的に受け入れたいわけです。

ですので「どうせ大学院入試を受けても合格できないだろうから」とネガティブに考えすぎる必要はありません。

大学院について

ところで、大学院には2段階の課程があるっていうのは具体的にどういうこと?

大学院の構造の話だね!
基本的なところからおさえていこう!

ガネ吉

“学位”について

全体的な構造をおさえていただくために、ここでは大学も含めてお話ししていきます。

専門学校では鍼灸マッサージ師になるために“免許”の取得を目指すように、大学・大学院では研究者になるために“学位”の取得を目指します。

学位は3層構造になっており、大学で取得できるのが“学士号大学院で取得できるのが“修士号”と“博士号です。

なので大学院には修士課程と博士課程の2段階の課程があります。

大学と大学院の違い

大学と大学院はどう違うの?

ものすごく大雑把にいうと…
大学では授業が中心で、研究に必要な知識を身に付ける!
大学院では研究が中心で、研究に必要な技術を身に付けるよ!

ガネ吉
大学大学院修士課程*1大学院博士課程*1
通常在学期間4年間2年間*23年間*3
必要単位124単位30単位20単位
卒業/修了
要件*
・必要単位を修得*4・1年以上在学
・必要単位を修得
修士論文または特定課題の研究成果*5の審査に合格する
・1年以上在学
・必要単位を修得
博士論文の審査に合格する
生  活授業がメインで研究はほとんどやらない授業と研究が半々
(研究分野やテーマによって研究の比重が変わる)
研究がメインで授業はほとんどやらない

*1 修士課程は“博士前期課程”、博士課程は”博士後期課程”と呼ばれることがありますが中身は同じものです。
*2 大学院によっては1年で修了できるコースもあります。
*3 早期修了できることもあれば、3年を超えることもあります。
*4 以前は卒業要件として在学年数に関する規定もありましたが、2022年に改定がなされました。(参考:文部科学省HP
*5 特定課題の研究成果というのは、何か実験をして論文を書くのではなく、既に論文として発表されている数々の知見を合わせて1つの論文にまとめるもの(総説論文)が多いようです。

大学院の修士課程と博士課程の違い

上の表を一見すると修士課程と博士課程は通学期間が違うだけのようにも感じますが、修了の難易度は大きく異なるんです。

端的にいうと修士課程は努力さえすれば2年で修了できるのが普通なのですが、博士課程は努力をしても3年で修了できるとは限りません

というのも、修士課程では研究成果を修士論文としてまとめて学内の審査を受ければいいのですが、博士課程では多くの場合研究成果を学術論文として発表した上で博士論文としてまとめる必要があるためです。(修了要件は大学院によって異なりますので、あくまで“多くの場合”です。)

学術論文?修士論文や博士論文と何が違うの?

いまいちピンとこないよね…。
研究者の命ともいえる“論文”について簡単に説明するよ!

ガネ吉

MEMO

学位論文と学術論文の違い

  • 学位論文
    対 象:卒業論文、修士論文、博士論文
    目 的:学位を取得するため
    提出先:大学・大学院
    備 考:研究成果の公表よりも学位審査のためという意味合いが強い(極端にいえばかなり大きめの課題レポート)
  • 学術論文
    対 象:学位論文以外の全て(原著論文、総説論文など)
    目 的:研究成果を世間に公表するため
    提出先:論文雑誌の出版社(論文雑誌の例としてNatureやScienceなどが有名)
    備 考:一般的に“論文”というとこちらを指す

学位論文と学術論文の最大の違いは、学術論文の場合は“査読”という同じ専門分野の研究者による審査を受けることです。

世間に公表されている学術論文というのは、査読によって「妥当な実験に基づいた新しい知見を提供するものである」と認められた結果として論文雑誌に掲載されたものです。

ただ、査読を担当した研究者も仕事の合間を縫って論文を審査することになりますので、多くの場合査読結果が返ってくるまでに1~3ヶ月程度、場合によっては1年以上待たされることもあります。

さらには査読の結果、論文の掲載を却下されることもあり、そうすると別の論文雑誌にまた投稿することになります。

論文雑誌は星の数ほどあるのでなんだかんだで最後には掲載してくれる雑誌が見つかることが多いですが…

とにかくここでいいたいのは、博士課程を修了するためには研究成果を学術論文として発表する必要があり、学術論文を発表するためには査読という時間の掛かるプロセスがあり、自身の努力ではどうにもできないということです。

博士課程は努力しても3年間で修了できるとは限らないといったのはこのためです。

大学院進学のリスク

大学院の概要はわかってきたよ。特に博士課程は既定の年数で修了するのが難しいんだね…。
ところで、冒頭で「大学院進学(特に博士課程)は積極的には勧められない」っていってたけど、具体的にはどういうことなの?

ひとえに大学院を修了するのは結構大変だからだよ!
ここでは大学院の中でも特に博士課程に進学する上での4大リスクについて話していくよ!
鍼灸マッサージ師に限らず一般的な大学院の状況として聞いてね!

ガネ吉

リスク① 収入が低い

ごく当たり前のことですが、在学中も生活をしていかなければなりません

大学院生が収入を得る方法としては➀学内のアルバイト(ティーチングアシスタントやリサーチアシスタントなど)、②学外のアルバイト(大学や専門学校の非常勤講師やその他諸々)、③奨学金などが挙げられます。

家庭が裕福で経済的支援を受けられたり、既に社会人として働いていて貯蓄が潤沢にあればいいのですが、大半の大学院生は奨学金を貰いながら収入も低い中でなんとかやりくりしていくという状況になります。

リスク② 留年する可能性が高い

上述のように、博士課程は自身の努力だけではどうにもならない部分がありますので、既定の年数で修了できない例が多いです。

博士課程を3年間で修了できずに留年することを”オーバードクター”と呼びます。

あくまで僕の肌感ですが、オーバードクターの方は毎年10人に2~5人おり、研究室によっては「オーバーするのが当たり前」というような風潮もあったりします。(また、一般的に文系の博士課程は何年もかけて博士号を取得するのが普通なようですので東洋医学史などを専攻する場合は注意が必要かもしれません。)

リスク③ 就職が難しい

僕が大学院進学をお勧めできない最大の理由が、首尾よく修了できたとしてもすぐに就職できるとは限らないという点です。

博士号を取得しても正規雇用されず、任期付きで研究員をすることを“ポストドクター(略してポスドク)”と呼びます。

現状として博士号取得者の数に対して大学教員などの雇用の枠が少なく、博士課程修了後もしばらくはポスドクを続けながら就職先を探すという例が多いです。

また、もし自身の専門分野に合った公募が出たとしても、他にも同様の立場の人が多くいるわけですから競争も激化します。

しかも相手は自身よりも長くポスドクを続けていて多くの研究業績を持っている方々なわけですから、ライバルが非常に強いということも難点です。

僕の大学院時代の先輩や同期にも未だに正規雇用されておらず、ポスドクのまま職を転々としている方々も少なくありません…。

22歳になってから修士課程に進学して博士課程まで順調に修了することができても、その頃には27歳になっているわけですから、結婚や家庭を持つことなどのライフイベントも考慮すると…僕が大学院進学をお勧めできないという理由がわかっていただけるのではないでしょうか。

リスク④ 逃げ道がない

ある意味最も危険なリスクです。

大学院進学の典型的なパターンは、大学を卒業して修士課程、博士課程という流れですが、その過程で資格や免許を取得せずに手ぶらで進めてしまう方々も多いです。

そして、修士課程修了時点では一般企業への就職チャンスがありますが、博士課程まで進んだ途端に一般企業への就職が難しくなり、もはや大学や研究機関などの研究職を目指すしかなくなるという傾向があります。

つまり、博士課程まで進んでしまったら最後、研究職以外の就職先(=逃げ道)がなくなってしまうんです。その結果、うつ病を患ってしまう方々も珍しくありません。

“逃げ道”という響きから“よくないもの”という誤解を与えそうですが、逃げ道があることは本当に大切なことです。

総じて、大学院生は非常に強いストレスを感じやすいということを踏まえておいてください。

具体的なイメージとしては以下の通りです。

奨学金を借りつつアルバイトをしながらなんとか生活をやりくりしている中、周りの同世代たちは社会人としてバリバリ働いてお金を稼いでいる様子が気になり不安と焦りが募る。そして自らの研究がスムーズにいっているかというとそうではなく、いよいよ投稿した論文もなかなか査読が返って来ず、3年で修了できないのではと一層焦りが強くなっていく。ついに修了できるとなっても就職先の選択肢が少なく、いくつか公募に出してみたものの同じ分野のライバルが多くて書類審査さえ通らない。さらには博士課程まで来てしまったため、一般企業への就職も難しく逃げ場もない。そうして定職に就けないままズルズルとポスドクを続けていく…。(驚かせ過ぎかもしれませんが、現実的にあり得ることです。)

だから、僕はさいさいと人に大学院進学を勧められないわけです。

BAD Points

大学院進学(特に博士課程)の4大リスク

  • 収入が低い
  • 留年するリスクが高い
  • 就職が難しい
  • 逃げ場がない

鍼灸マッサージ師が大学院に進学するメリット・デメリット

大学院進学を積極的に勧められないという意味がよくわかったよ…。
一方で、「鍼灸マッサージ師免許を持っているなら目指してみてもいい」ともいってたよね?

そうだね!
上記のリスクと対応させて、僕が感じた鍼灸マッサージ師ならではの強みについて話していくよ!
合わせて、なんで大学院に入る前に理療科教員免許を取得することを強く勧めたのかもここで説明するよ!

ガネ吉

GOOD Points

鍼灸マッサージ師ならではの強み

  • 収入が低い
    → 鍼灸院で働いて収入を得る

    (特に理療科教員免許を持っていれば、地方公務員として安定収入を得ながら大学院に通える!)
  • 留年するリスクが高い
    → 鍼灸マッサージ分野は未発達で研究しやすい

    (特に理療科教員免許を持っていれば、視覚障がい教育の研究も範囲になる!)
  • 就職先が少ない
    → 鍼灸系大学や専門学校への就職も狙える
    (特に理療科教員免許を持っていれば、就職が有利になる!)
  • 逃げ場がない
    → いつでも”臨床の道”に戻れる

    (特に理療科教員免許を持っていれば、教育の道にも進める!)

強み① 鍼灸院で働いて収入を得る

鍼灸マッサージ師免許を所持していれば、通学中に鍼灸院で働いて収入を得ることもできます。

とはいっても、鍼灸院でパートタイムで働く場合はそれほど高い収入は期待できないかもしれません。

その点、理療科教員免許を持っていて盲学校に勤務している場合、地方公務員として安定した高収入を得ながら大学院に通えます。

また、理療科教員免許の有無に関わらず、実は“臨床経験を積める”こと自体がメリットになるんです。(収入の話からは逸れますが…)

というのも、鍼灸系の大学教員になる場合は附属の鍼灸院等で実習の指導をすることが求められますので、就職審査の際に臨床経験を問われることになるためです。

強み② 鍼灸マッサージ分野は未発達で研究しやすい

鍼灸マッサージ師免許や理療科教員免許を持っていれば収入面の問題が補えるというのはわかるけど…
留年するリスクに対してどう役に立つのかはイメージが湧かないな。
結局、研究を頑張るしかないんじゃないの?

確かに、直接的に留年するリスクを軽減するわけではないんだけど…
学術論文を発表する上での強みがあるんだよ!

ガネ吉

先ほど、博士課程を修了するためには学術論文を発表する必要があり、その関門として査読というものがあると話しました。

査読では「妥当な実験に基づいた新しい知見を提供するものである」かどうかが問われるのですが、実はこの“新しい知見”というのが多くの研究者が困るポイントなんです。

というのも、研究が進んでいる分野というのはあまりに論文が多すぎて、自身の論文が「新しい知見を提供するものである」とアピールするのが難しいんです。

一方、鍼灸マッサージ分野は世界的にみても論文数が少ないため、どんな実験をしても新規性があるとみなされやすいです。

また、理療科教員免許を持っているということは理療教育(視覚障がい者に対する鍼灸マッサージ教育)も研究テーマとなり得ます

理療教育という分野自体が世界的にも非常に珍しいですので、それをテーマとした論文は新規性があると認められやすいということになります。

さらに、理療科教員として働いているならば、学校や周囲の協力が得られれば実験対象者を集めやすいということも利点になります。

まとめると、学術論文を発表するためにはあまり研究が進んでいない分野を専攻するのが最も手っ取り早く、鍼灸マッサージ分野や理療教育分野はその1つだといえます。

強み③ 鍼灸系大学や専門学校への就職も狙える

大学への就職を視野に入れると、A, ライバルが少ないポストを探し、それに応じてB. 業績を積むということが大切です。

A. ライバルが少ないポストという側面では、多くの鍼灸マッサージ師は研究の道には進まないのでライバルが少なく、免許制度があるため他の分野の研究者も参入しづらいという好条件ぶりです。

B. 業績を積むという側面では、大学教員へ就職するにあたり研究歴教育歴の2つが求められます。(鍼灸マッサージ分野においては臨床経験も重要です。)

研究歴というのは「現在に至るまでどんなテーマで研究していて、論文や学会発表をどれくらいしているか」というもので、これについては大学院で頑張って研究していれば自然と積み上がっていきます。

厄介なのは教育歴の方です。

教育歴というのは、端的にいうと「授業をした経験」のことで、大学教員を目指す場合は大学などでの授業経験が肝になります。

一般的な研究者が大学で授業をするとなると、はじめの1歩は非常勤講師ということになるのですが、最近では大学側が求める基準が厳しくなっており非常勤講師にさえ教育歴が求められる始末です。

つまり、はじめの1歩が塞がれているので教育歴を付けるのが非常に難しいということです。

その点においても鍼灸マッサージ師の強みがあり、鍼灸系の大学ならば「ライバルが少ない=大学側も非常勤講師を呼ぶのに苦労する」ので、早い段階から非常勤講師として働けるチャンスがあります。

また、理療科教員免許を持っている場合、もし大学の非常勤講師のポストがなければ専門学校の鍼灸マッサージ科で非常勤講師をするというのも1つの選択肢となります。

さらに、盲学校で働くほか柔道整復師養成課程の基礎科目を担当することもできるので、選択肢が広がる分だけ教育歴を付けやすいということになります。

強み④ いつでも”臨床の道”に戻れる

なんだかんだ言いましても、結局はこれが大きいです。

つまるところ、人の感じる不安というのは「生活していけるのだろうか?」ということだと思います。

一般的な大学院生像では、資格や免許もなく、逃げ道となる就職先もないためにお先真っ暗の研究の道を突き進むしかないという絶望感と向き合うことになります。

一方、鍼灸マッサージ師免許を持っているだけで全国津々浦々の鍼灸院が就職先候補となりますので、それだけでもひとまずの安心感があります。

大学院に進学してみた結果、もし研究が肌に合わなかったり上手くいかなかったりした場合は臨床の道に戻ることができます。

さらに、理療科教員免許を持っている場合は盲学校や専門学校の教員になれますし、鍼灸系大学院に進学した場合は履修した科目に限って鍼灸マッサージ師養成課程の授業を担当することもできるので、教育の道に進むこともできます。

もっというと、ネットで調べてみると大学によっては修士号のみを取得して教員になっている例もあるようですので、博士号を取得せずに大学教員になれる可能性もなくはありません

鍼灸師の大学院進学戦略

いろいろ話を聞いて全体像が見えてきたよ!
最後に、大学院進学を考えるにあたってどんな戦略を立てればいいのか教えてほしいな。

僕なりに考える鍼灸マッサージ師の研究の道の戦略について解説するね!
あくまで僕個人としての考え方だから参考程度にしてね!

ガネ吉

前提:教員養成課程

しつこいようですが、大学院に進学する前に理療科教員免許を取得することを強くお勧めします。

その理由は上述の通りです。もしまだ理療科教員免許について知らない場合はこちらの記事をご覧ください。

【キャリア02】高校教員にもなれる!?鍼灸マッサージ“教員”養成課程に進学するなら●●一択!

この記事では、「鍼灸マッサージ教員養成課程の選び方」をテーマに、①そもそも高校で鍼灸マッサージ教員をするとはどういうことか、②なぜ大学で免許を取得すべきなのか(専門学校と大学の教員養成課程の違い)につ ...

修士課程

まず、専門学校卒の場合は入学資格審査の観点から一般的な大学院へ入るのは難しいだろうと思われますので、鍼灸系大学院が選択肢になると思います。(少なくとも、僕の周りでは専門学校卒で一般的な大学院修士課程へ入学した例を知りません。)

鍼灸系大学院の例は以下の通りです。

POINT

鍼灸系大学院の例

  • 通学制
    関西医療大学大学院(大阪)、帝京平成大学大学院(東京・千葉)、東京有明医療大学大学院(東京)、明治国際医療大学大学院(京都)、森ノ宮医療大学大学院(大阪)
  • 通信制
    明治国際医療大学大学院(京都)
    ※厳密には鍼灸系大学院ではありませんが、人間総合科学大学大学院(東京)は「有資格者枠入試」として鍼灸マッサージ師免許保有者向けの入試を実施していることがHPで明記されています。(参考:人間総合科学大学大学院HP

いくら鍼灸マッサージ分野の研究者が少ないからといっても、すぐに大学教員などに就職できるとは限りませんので、教育の道を保険として残しておいた方が安心です。

そのため修士課程の進学先も理療科教員免許を取得しているか否かで少し異なります。

① 理療科教員免許を取得している場合

この場合は盲学校でも専門学校の鍼灸マッサージ科でも柔道整復科でも教員になることができますので、入学できるのであれば修士課程の進学先は問いません

もう少しいうと、盲学校教員を目指すのであれば修士課程に進学することを前向きにお勧めさえできます。

その理由は、修士号を持っていると教員採用試験に有利になりますし、採用後に学歴給として給与が上がるからです。修士課程に掛かった学費のもとも取れますし、後々になって昇格にも活きるでしょう。

② 理療科教員免許を取得していない場合

この場合はまだ教育の道が保険になっていないため、鍼灸系大学院に進学するのがよいと思います。

なぜなら、鍼灸系大学院で履修した科目は専門学校や大学等で担当することができるからです。

理療科教員免許を持っているかどうかが重要なんだね。
いずれにしても鍼灸系大学院の中から選ぶことになるということだけど、どう選べばいいの?

最近出てきた通信制が良いと思うよ!

ガネ吉

大学院に関する小話として、研究室に所属すると部屋の掃除当番やらなんやらと雑用を頼まれることが多くあります。

通信制であればそういった雑用を回避できる上、働きながら大学院に通えるので収入面も比較的安定し、臨床経験を積むこともできます。

そうすると、気になるのは明治国際医療大学大学院人間総合科学大学大学院です。

POINT

通信制大学院の違い

  • 明治国際医療大学大学院(京都)
    メリット:鍼灸学専攻のため、履修した科目は大学や専門学校で授業を担当できる
    デメリット:国家資格に加え、5年以上の臨床経験が求められる。
    → 理療科教員免許を持っていない人向け
  • 人間総合科学大学大学院(東京)
    メリット:国家資格を所持していれば「有資格者枠入試」を受験できる
    デメリット:鍼灸学専攻ではないため、履修した科目でも授業を担当することはできない
    → 理療科教員免許を持っている人向け

※ 両大学院とも僕の周りにいた実例を元に記載していますが、現在では異なっている可能性がありますのでご注意ください。

博士課程

しつこいようですが、博士課程は基本的にお勧めはしません。

ですが、教育の道を保険にしていれば進学を検討してみてもいいかもしれません。ということを踏まえた上でお話ししていきます。

修士号さえ取得できれば、博士課程は選び放題です。

あくまで“入学資格上は”ですが、実際修士課程よりも博士課程の方がさらに入りやすいのもまた事実です。

その理由は上述の通り、まず博士課程まで進学を希望する人は修士課程よりもさらに少数であることと、博士課程の院生は学術論文を投稿しなければならないため大学院側としても本当の戦力になるためです。

ただし、博士課程へ進学するということは大学教員などの研究職の就職を目指すということになるかと思いますので、専攻は就職まで視野に入れて慎重に選ぶべきです。(就職なんてどうでもいいから研究がしたい、というのなら自由に選んでもいいのですが…。そういう考えの人は後々になって苦労する可能性が高いので僕は大学院進学をお勧めできません。)

慎重に選べと言われても、どう選んだらいいのかわからないよ…。

専門分野は就職先の選択肢に直結するから「鍼灸マッサージ分野に加えてもう1つ専門分野を増やす」ことを考えるといいよ!
具体的には大学の公募を調べてみるのがお勧め!

ガネ吉

研究機関の公募は、科学技術振興機構が運営しているJREC-INというサイトがよく使われます。

このサイトで専門分野と関連するキーワードを入れると、大学や専門学校の公募がヒットします。

僕なりのお勧めの調べ方(専攻の選び方)は、就職先の選択肢を増やすために「鍼灸マッサージ分野とに加えてもう1つの専門分野をどうするか」です。

例えば、「スポーツ科学系の専攻を選択すれば、スポーツ科学部の教員の公募が出た際に応募できるかも」といった具合です。

近隣の分野で検討するなら、(東洋医学)史学や(視覚)障害科学などの分野でしょうか。(医学もありますが、それほど分野を広げることにはならないかもしれません。)

検索してみてヒットした件数が多ければ、それだけ研究者需要の高い分野だといえます。

そしていくつかの公募内容を覗いてみて、どんな人材が求められているのかをチェックすることで、将来自分がどのような業績を積む必要があるのかがみえてきます。

さらに徹底的に調べるなら、気になった大学の教員の年齢を調べてみるのもよいと思います。

もしあなたが博士課程を修了するタイミングで定年を迎えられる先生がいたら、その先生と似たような研究歴を積んでおけば就職できる可能性が上がります。(攻めの作戦としては有効だと思いますが、あまりにマニアックな研究分野だと他に応募する選択肢が減ってしまうかもしれないので要注意です。)

というわけで、①公募数が多いか、②自身の将来を想像したときに応募できるビジョンが持てるかがポイントになります。

まとめ

大学院は勢いだけで入ったらいけないことがよくわかったよ…。
まずは理療科教員免許を取得することから考えてみようかな!

そうだね!後悔しないためにも是非そうしてほしい!
最後にこの記事の内容をまとめるよ!

ガネ吉

ESSENCE

Q1. 大卒じゃなくても大学院に進学できるの?

A1. 鍼灸マッサージ師免許(=国家資格)を持っていれば進学できる!

Q2. 大学院はどう選んだらいいの?

A2. 理療科教員免許を取得しているか否かで分かれる!


Q3. 大学院進学はお勧めできる?

A3. 基本的にお勧めできない!けど、理療科教員免許を持っているなら話は別!

-学 問
-, , ,